カシコレラ・ミュージック

カシコレラ・ライヴをカシコレラ・ミュージックと改称し、音楽に関する気ままな投稿場所とします(2023年4月10日より)。

優美で温かく彩り豊かな心安らぐプレイリスト③ The Durutti Column - Lunch

『優美温彩 ~すべての人に安らぎを 2023冬』

【第1部】

01.Steve Howe - Cantata No.140 (Wachet Auf)

02.Steve Howe - Rose

03.The Durutti Column - Lunch 

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”Keep Breathing”(2006) 

このプレイリストに、どうしてもドゥルッティ・コラムの楽曲を入れたかった。
子ども頃、クラシック・ピアノを学び、10歳からギターを始めたというヴィニ・ライリーのクラッシック音楽の素養が発揮された楽曲を選曲した。

長くなるが、ドゥルッティ・コラムとヴィニ・ライリーについて記しておきたい。

ドゥルッティ・コラムとは】

The Durutti Column(ザ・ドゥルッティ・コラム:以下DCと略する)は、英国・マンチェスター出身のギタリスト(ピアニストでもある)、Vini Reilley(ヴィニ・ライリー)による音楽プロジェクト。

DCという名前は、スペイン戦争(1936~1939)の際、革命家ブエナベントラ=ドゥルッティが率いたアナーキスト部隊(ドゥルッティ=コラム:ドゥルッティ部隊)に由来する(注1)。

【1stアルバムの誕生】

1stアルバム発表前、DCはバンド形態だった。
他のメンバーが商業的な成功に固執していたこと、Vini自身が病気を患ったことなどのため、Viniはバンドを抜けて自宅で静養していた。
ファクトリー・レコードの創設者・トニー=ウィルソンやプロデューサー・マーティン=ハネットが、そんなViniのもとを訪れ、「君こそがDCなのだからレコードを作ろう」と持ちかけた。
Viniはスタジオに入った。

当初、何をするわけでもなく、ただイスに座ってぼーっとしていたVini。
シンセサイザーから突然、鳥の鳴き声が聞こえてきた瞬間、インスピレーションが湧き、思いのままにギターでフレーズを奏でていった。
その演奏を録音したのが’Sketch For Summer’。
記念すべき名曲の誕生だった。

The Durutti Column - Sketch For A Summer

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1stアルバムは、そのような方法で2日間で録音された。
”The Return of The Durutti Column”(1980)が出来上がった。(注2)

【1stアルバムのジャケット】

1stアルバムのアルバムジャケットの逸話が凄い。

限定2000部で制作された初回プレスのアルバムジャケットは「かなり目の粗い淡い黄色のサンドペーパーで、やすり面が外側になるように」つくられたものだった。

このことについて、1984年、来日したViniに大鷹俊一氏がインタヴューしている(注3)。

- あのアルバム ("The Return Of The Durutti Column") の初回プレスは、きれいなサンドペーパーに包まれてましたね。それはあなたの発想、コンセプトですか?

- いいえ、あれはトニー・ウィルスンのアイデアです。手作りの限定盤で、ファクトリーのオフィスでジョイ・ディヴィジョンが手伝って一枚一枚丁寧にノリでサンドペーパーを貼ってくれました。この発想はシチュエイショニスト(情況主義者) らの考えから
ヒントを得たもので、彼等はサンドペーパーを使った本を出そうとしました。本棚に置いといて他の本をメチャメチャにするために。それと同じ発想です。


ちなみに私が持っているのは2版め以降のLPレコードで、ジャケットは黒い布目のような紙質だ。下方に金色の文字でTHE RETURN OF THE DURUTTI COLUMNというタイトル。上の方には金色で3つの枠が縁取られ、その中に青を基調とした3枚の小さな絵があしらわれている。


左:船が浮かぶ海の風景
中央:海辺の町を見下ろした風景
右:モーツァルトの楽譜が置かれたピアノがある室内風景

音楽一家に生まれて音楽に関する絵もたくさん描いているDufy(デュフィ)の絵画作品だ。

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(注1)天井潤之助 アルバム”rebellion”ライナー・ノーツ他
(注2)渡辺亨 アルバム"Keep Breathing”ライナー・ノーツ
(注3)大鷹 俊一:「来日したドゥルッティ・コラムほかに聞く」( ミュージック・マガジン, 1984年6月号)